2012年6月19日火曜日

犬の疥癬

疥癬とはヒゼンダニ類という寄生虫が引き起こす皮膚の病気です。
非常に強い痒みと皮膚の炎症が特徴です。

今回のワンちゃんは皮膚のアレルギー疾患と言われて治療を受けていましたが、途中で飼い主さんが変わったこともあり、お薬やシャンプーを飲んでいても改善しないとのことで来院されました。

初診のときには、かゆみもさることながら、全身状態の悪化が顕著でした(画像下)。当院では皮膚掻爬検査を行った所、画像右下の様な寄生虫(疥癬)が認められました。


疥癬の一般的な治療はダニ駆除薬を1週間〜10日間隔で注射します(ダニの卵にはダニ駆除薬が効果ないので、孵化したころに注射する、を繰り返す必要があります)。

このワンちゃんは数回このお注射を行った他、食事療法、シャンプー療法で完治しました(画像下)。

夜も寝られないほど痒みがある、お薬を飲んでいるのに改善しないというときには、この疥癬の可能性もありますので、かかりつけの動物病院の先生にご相談下さい。



2012年6月16日土曜日

犬の心膜液貯留

高齢のゴールデン・リトリーバーが元気消失と発咳を主訴に来院されたのですが、心臓のエコー検査を見ると、心膜腔と呼ばれる心膜と心膜の間の空間(矢印の部分)に大量の液体貯留が認められました。
このような状態を心膜液貯留と呼びます。

鑑別診断としては、血管肉腫や大動脈小体腫瘍、中皮腫などの腫瘍疾患、ゴールデン・リトリーバーに多い特発性(つまり、原因不明の)心膜液貯留などが考えられます。

心膜液貯留が急激だったり、貯留液が多くなると心臓を圧迫して心臓の収縮・拡張機能に影響をきたすことで血圧が下がる状態を「心タンポナーデ」と呼び、適切な治療が施されないと亡くなってしまうこともあります。

心膜液貯留の診断、治療については状態によって様々な選択肢(心膜穿刺、心膜切除などの外科手術など)がありますので、かかりつけの動物病院とよく相談する必要があります。